日立連合ねぶた委員会
吹越村の火消し権現
作: 北村 蓮明
昔、上北地方の吹越村のお宮に、大きな立派な権現さまが祭られていた。
火事があると空を飛んで火事場へ行き、大きな布を羽ばたかせて、火を消し止めるのだという。
ある祭りの夜、田名部の三郎はお宮から、こっそり権現さまを盗み出していた。
高い値で売りさばこうと小舟に積み込み函館を目指していると、突然空がまっ暗になり、大粒の雨が音をたてて降り始め海は大荒れ。
慌てた三郎は権現さまの布の端をぎっしりつかんで離さない。
権現さまは三郎をぶら下げたまま、ものすごい勢いで嵐の空へ舞い上がったのである。
横浜村の近くへ来ると大きく宙返りをし、海のそばの大きな岩にふわりと下りると疲れた体を休めるように動かなくなった。
この時から吹越の権現さまは横浜村の八幡様に納められ、この村を火事から守っているという。
権現さまは現在も横浜町の八幡神社に祀られている。